2、カケル

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私が13歳の時、私の足と足の間から血が出ました。私は、それが何なのか知りませんでした。在るものは、毎月生理があるわけではありません。子供が欲しいと願ったら月のものがやってきます。そして、直ぐ子供ができます。私は、自分が纏った『衣』について全くの無知でした。 心配になってカケルに相談しました。父親ですから一緒に心配してくれると思ったからです。変な病気かなと思っていた私は本当にバカです。私が「オレ、足の間から血が出るんだよ。」というとカケルは明後日の方を向いて「干草を当てて布で抑えろ」と教えてくれました。 「それは、7日ぐらいで止まる。だから、怖がるな。」とカケルは言って最後は笑いました。 カケルが言った通り、7日目には止まりました。ちゃんとカケルにも報告しました。それは、心配をかけていたら申し訳ないという気持ちでした。 次の日、また2人で温泉に行きました。その夜のカケルは、グズグス酒を煽っていました。 「オレ、先に寝るから。」と私は言って毛皮で微睡んでいたら、カケルがガチャンと小さな盃を割る音が聞こえました。私は半分寝ていました。カケルも毛皮に入ってきました。何時もは横なのに、私の上に乗ってきたのです。目が覚めました。 「なんだよ!せっかく寝るとこだったのによ!」と私が怒って言うとカケルは信じられないことを言ったのです。 「アマはオレの女房だ。大人になるのを待っていた。」 「はぁ?なんだよ。わかんねぇ。女房ってなんだよ!オレはそんなのにはなれねぇ!」私は高天原の女王です。 するとビンタをされました。何度も何度も。あの優しかったお父さんだったはずのカケルの急変に私の頭は追いついていなかったのです。全身で暴れました。カケルは年寄りではありませんでした。 何度ビンタしても言うことを聞かない私に、カケルは苛立ち、拳で鳩尾(みぞおち)を殴られました。 全身から力が抜けました。意識も朦朧としてしまいました。カケルは容赦なく私の中に入って来ました。 身体を引き裂かれるような痛みを感じました。口の中が切れて血の味がしていました。 カケルが私に乗って動いている間、私は顔を背けて身体を放棄しました。カケルの動きが止まるとカケルは私を抱きしめました。カケルは泣いていました。私は泣いていませんでした。ただ、心の在処が違う場所に行ってしまった気がしました。」 アオイはここでストップをかけた。 「無理に話さなくていい。君は強姦されたんだね。それ以上、話さなくていい。顔色がすごく悪い。」 「話す。話したいの。私は身体を放棄しただけで、カケルの女房じゃない!カケルと私は、ここから認識が違うの。カケルは私を妻だと思い込み、私は自分を高天原の女王だと思っていたの。今もあの時と同じまま。違ったままなのよ!この縄文の話は裁断には関係ないけれど、カケルの心に大きな影響を与えている。 カケルはカケルの常識で私を妻にしたつもりなの。今とは常識そのものが違うのよ。今なら、大人の男が13歳の女の子に強姦したと言うことになるでしょう。でも、あの時代は12だろうがなんだろうが、穢れが来たら大人の女なの。カケルは私が高天原の女だとは知らなかった。脱走した縄文の娘だと思っていたの。彼は悪くないのよ。3年も一緒に暮らしていたんだもの。私は逃げ出しもしなかった。それは“了承“と取られても仕方ない。」
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