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思いの丈をすべてブチまけた。景子は俺のほうをジッと見つめている。
「ありがとう、直樹。そんなに私のことを思って色々考えてくれてたんだね」
景子の目は少し赤くなっていた。そして、左目から水滴がゆっくりと落ちた。俺はすぐさま後ろポケットからハンカチを取り出し、景子の目を拭いた。
「もう、泣くなって、景子!」
「あっ、ごめんごめん!」
景子は泣きながら笑っている。再びハンカチで景子の目を拭いた。ああ、そうだ。この笑顔。間違いなく、昔から知っている景子そのものだ。
「そうだ! 景子、約束覚えてる? また一緒にハウステンボス行こうって約束……」
「うん! 覚えてるよ!」
「治療して少し良くなったら、またハウステンボスに二人で行こう! あの時は修学旅行だったのもあって時間制限とかあったけど、今はもう俺ら大人だし、制限とかないから自由に色んなアトラクション周れるしね! あの綺麗だった噴水ショー、また見に行こうよ!」
「行きたい行きたい! またあの噴水ショー見たい!」
「よし、じゃあ、その前に二人で住むマンション、明日にでも見に行こうか! 景子も部屋見たいだろ!?」
「見たい見たい!」
「じゃあ、今日にでも不動産会社に電話入れとくよ。明日、一緒に見に行こうな!」
景子は嬉しそうな表情でスフレプリンの続きを食べ始める。
「そんなことより、直樹、早くお弁当食べないと次の講義に遅れちゃうよ!」
「やっべ! そうだった! 急がないと!」
焦った俺はダイソンの如く、もうスピードで弁当のおかずを口の中に入れる。途中、喉に具が少し詰まってしまい、むせてしまう。
景子は「あはははは! 大丈夫!?」と笑いながら、俺にお茶が入っている水筒のコップを渡してきた。『ありがとう』と言いながらお茶を飲み、何とか詰まりを流し、ほっと息をはいた。
そのときだった。
「でも、どうしよう」
「え?」
「直樹、今、『犯罪者の心理について』の卒論書いてるんだよね?」
「そうだけど。それがどうしたの?」
「もし、直樹が犯罪者の心理状態を知りたいが為に、あえて自分で犯罪者になる実験をしてきたら、私、どうしよう」
「は? 景子、何言って……」
「同棲しようって誘ったのは、私をマンションに監禁するのが目的で、逃げられないようにトラバサミとか色々なトラップが仕掛けられてる部屋に連れてって、鎖で身体中を縛り付けて動けなくして、黒幕の直樹が『今から命をかけた脱出ゲームを始める!』とか言ってきたら、私、どうしよう……」
〈終〉
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