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「万里、駿、優雨青、おめでとう!」
「おめでど〜!ほんどにほんどにおめでど〜ッ!」
紫織と尋海がブーゲンビリアの花びらを振りまきながら3人を祝福した。
尋海は相変わらずの大号泣で、紫織はまもなく還暦を迎えるというのに女優のように美しい。
「尋海、せっかくのお化粧が崩れちゃうから泣くなよ」
優雨青は山のようにそびえ立つ尋海を見上げながらクールな顔で囁いた。
「可愛い顔が台無しだ」
それを聞いて尋海の涙は一瞬で引っ込んでしまう。
「ヤァだ!この子ってばもう!なんでそんなに天使なの⁈んもォ……スキスキ!大スキっ!」
尋海は優雨青が赤ちゃんの頃から自分のことを「尋海」と呼ばせている。
なぜなら……
音無先生とおんなじ顔に尋海ちゃんって呼ばれるのは、なんか気持ち悪い。
ということだった。
「相変わらず音無の家系は尋海のこと大好きだな」
腕組みしながら紫織が笑うのを見て優雨青が真顔で呟いた。
「紫織も可愛いぞ」
紫織は目を見開いて優雨青を見る。
青以をぎゅーっと押し潰して小さくしたような見た目の優雨青に可愛いとか言われるのはなんだかむず痒いが、それはそれで嬉しかった。
「おまえも可愛いよ」
紫織はニヤリと笑いながら優雨青の頭をグリグリした。
「なんだよ、やめろよ」
紫織もまた『小さな青以』から紫織さんと呼ばれるのは気持ちが悪いので呼び捨てでいいと言っていた。
そのかわり駿と一緒に武道の稽古をつける時は「師匠」と呼ばせている。
優雨青は青以と同等の頭脳と文才を持ちながら駿に鍛えられて育ったため、武道とスポーツもこなし、万里から受け継いだ霊感も持ち合わせた最強10歳児なのだ。
黙っていると少し不機嫌そうにも見える切れ長の瞳と端正な顔立ち。
10歳とは思えない落ち着いた態度と飄々とした性格で幼稚園生の頃からずっとモテモテだった。
「万里お姉ちゃん、駿お兄ちゃん、優雨青くん、おめでとうございます!」
陽花里と陽樹も両手いっぱいのブーゲンビリアの花びらを万里たちの頭上にシャワーのように注ぎながら祝福した。
青以のことが大好きだった陽花里は23歳になり、OLとして働き、いまだに万里に恋をしている陽樹は21歳の大学生だ。
「陽花里ちゃん、陽樹くん、ありがとう」
いつにも増して美しいウエディングドレス姿の万里を見て陽樹は泣きそうな顔をして笑った。
「万里お姉ちゃん、綺麗だな……」
優雨青は背伸びして陽樹の耳元に囁いた。
「陽樹兄、残念だけどお母さんは今日から駿お父さんの妻だから、他をあたってくれる?」
「……心配しなくてもおまえが大好きな両親の邪魔なんかしないよ優雨青。俺だって男だ。愛する人の幸せを願ってる。っていうかこの10年間だってあのふたりはずっと夫婦みたいだったし」
そこで陽花里も間に入り、寄り添って微笑み合う駿と万里を見つめながら言う。
「そもそもあのふたりは5歳の時からずーっと一緒だったんだから、絆の深さが違うのよ。誰も割って入ることなんかできないでしょ」
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