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翌日、面会時間ぴったりに音無マンションの皆が代わる代わる万里の病室を訪れ、『小さな青以』と対面した。
あまりにも青以に似ているので、誰もがひと目見て号泣するあり様だった。
1番に赤ちゃんを抱いたのは風間で、腕の中の赤ちゃんの瞳を見た瞬間から泣き通しだった。
愛娘が産んだ初孫だから当然可愛いに決まっているのだが、さらにその子は義理の息子になるはずだった青以に生き写しなのだから無理もない。
「万里、おめでとう。元気に生まれてきてくれただけでなく、青以さんにそっくりで、嬉しいですね」
「ありがとうお父さん。本当に、叔父さんが還ってきてくれたみたいで二重に嬉しい」
そのやりとりを見てその場にいた全員が号泣した。
2番目に赤ちゃんを抱いたのは出産直前まで万里に寄り添っていた駿だ。
明日香に教わりながら恐る恐る赤ちゃんを抱いた駿はその重みと可愛らしさに驚いた。
「……マメ蔵おまえ、本当に万里のおなかの中にいたんだな。でもって怖いくらい音無先生にそっくりだ」
駿がそう言って差し出した人差し指を赤ちゃんがぎゅっと握り返すと、駿は目を潤ませて呟いた。
「うわ……まだ目も見えてないのに指を握り返してくれたりとか……ヤバい……」
赤ちゃんの澄んだ目を見た者はみんな胸を打たれ、その顔に青以の面影を感じて涙を流さずにはいられなかった。
明日香も慣れた様子で赤ちゃんを腕に抱き、ひと目でメロメロになり、抱いているところを写真に撮るよう駿に頼んだ。
雪村と希和からすると赤ちゃんはひ孫のような存在になるのでまた別の可愛さがあり、喜びもひとしおだ。
この日のために本当に紫織から武道を習い、1から体を鍛え直し、生気に満ち溢れた雪村は希和と交互に赤ちゃんを腕に抱いて嬉し涙を流した。
「本当に青以さんにそっくりだ」
「とても綺麗なお顔をしてるわね。横顔には万里ちゃんの面影があるわ。すごく可愛い」
そしてなんといっても号泣のスペシャリストは……
「万里ぢゃあん、おめでど〜!がわいいね!あがぢゃん、ものずごぐ、がわいいよォッ!」
尋海は山のような巨体を震わせながら大きな手で赤ちゃんを抱き、大号泣した。
尋海が抱くと赤ちゃんは豆粒のように小さく見える。
万里はうんうんと大きく頷きながらもらい泣きした。
「音無先生にしか見えないヨォ、こんな可愛い赤ちゃん見たことない。がわいずぎるヨォ〜」
「……尋海、赤ちゃんに鼻水垂らすなよ、あと、早く俺にも抱かせろ」
紫織がそう言って苦笑すると尋海は名残惜しそうに赤ちゃんの頬に自分の頬を重ねてスリスリした。
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