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第1話 桜咲く
胸に桜の花飾りをつけた万里が会場の入り口に現れた瞬間から青以と風間は目頭を熱くしていた。
ふたりともその手にスマホやカメラを持っていたが、感激のあまり完全に手が止まってしまっていた。
その横で紫織と尋海が目の前の光景を余すことなく写真とビデオに収めていく。
「せっかくのお子様の晴れ舞台ですから、ご両親はもとよりご兄弟からお祖父様、お祖母様、ご両親の同意書があればご友人まで、生徒1人につき5人までご来場可能です」
自由で先進的な校風の、小中高一貫教育の私立『櫻陰学院』の小等部入学式は、学院自慢の大きな講堂で行われた。
在校生が造花の桜でアーチを作り、その下を新1年生が歩いて入場するという演出だ。
クラシカルな紺色のワンピースにセットのボレロを羽織り、紺のカチューシャをした万里を見て会場のあちこちからざわめきとため息が漏れた。
「A組のあの女の子、ハーフかな?フランス人形みたいだね」
「顔ちっちゃい!」
「もの凄い美少女がいるな」
ふわふわの長い栗毛を揺らし、姿勢良く真っ直ぐ前を見て歩く万里はそれだけで人目を引いた。
新入生は男女2列でペアを組んで入場してくるのだが、万里の隣を歩く男の子にも参列者たちの視線が集中した。
「ハーフ美少女の隣もかなりの美男子だな」
「凛々しくて可愛い」
「おっきな目と短い髪が良く似合ってる。将来もの凄いイケメンになりそうだね」
万里とペアを組んで歩いているのは、ちょうど身長が同じくらいの駿だ。
万里と同じようにその胸に新入生の証しである桜の花飾りをつけ、真っ直ぐ前を見ている。
濃紺のスーツに細かいストライプの入った白いワイシャツを着て、綺麗な水色と紺の2色使いのネクタイをしめた駿はキリッと凛々しく、こちらも武道で鍛えた姿勢の良さで他より抜きん出て見えた。
2階の保護者席で青以と風間の隣に座っている明日香も、涙で霞んで我が子の姿をカメラに収めることができずにいた。
さらに明日香の隣には希和と雪村の姿があり、さながら母親と祖父母のように見えた。
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