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万里と駿は教室でも隣り合って座っていた。
窓際の1番前の席だったので、青以と風間、明日香はふたりのすぐ目の前の窓際に立ち、超至近距離で見守る形になった。
万里は落ち着いた様子で黒板を見ていたが、駿は明日香のことが気になる様子でそわそわしていた。
ふたりの担任を受け持つのは大学を卒業したばかりかと思うような若々しい男性教師だ。
「はい、みんな親御さんが気になるのはわかるけど前を見て」
担任の高梨はその見た目に反し、教師7年目の中堅だった。
ハキハキと喋り、理知的で好感が持てる感じだ。
「私が君たちの担任、高梨紘基です。よろしくお願いします」
高梨は子どもたちに優しく微笑んだあと宿題を出した。
「今日の入学式の感想を夕食の時にお家の方たちと一緒に語り合うこと、それが君たちに出す最初の宿題です」
高梨の言葉に子どもたちは目を輝かせた。
「もし親御さんが写真やビデオを撮っていたら、みんなでそれを見ながら感想を言い合ってください。映像がないなら、今日目で見たこと、感じたことを話し合ってください。そして、今夜はゆっくり眠って明日はランドセルを背負って元気に登校してください」
子どもたちは元気いっぱいに返事をしてさよならの挨拶のあと、保護者とともに帰宅となった。
青以たちの一角は異常に目立っていた。
ハーフ美少女に短髪美男子、ふたりは知り合いで、その保護者も美形揃いなのだから当たり前だ。
青以と風間に挟まれてとびきりの笑顔を見せる万里と、明日香の横で照れ臭そうにはにかむ駿。
母親たちは青以と風間に釘付けだ。
「どっちがあの子のパパかしら。スーツが似合いすぎててヤバい」
「どっちにしてもめちゃくちゃカッコいいんですけど。あんな若くてシュッとしたパパとか有りですか?」
「優しげなイケメンと少し陰があるイケメンが並んでるとか……」
「いいなぁ、あの子、カッコいいパパがふたりもいて。うちのパパなんかハゲてるし」
皆が口々に青以と風間を褒めるのを見て万里は嬉しくなった。
ただ、ここに母がいないことだけが少し寂しかった。
母親に抱きつく子、母親に抱きしめられている子を見つめる万里を見て、両側から青以と風間が手を握った。
「帰ろう。皆がおまえたちと食事会に行くのを楽しみに待ってる」
青以と風間の深く優しい眼差しと、手の温もりを感じて万里は笑顔で大きく頷いた。
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