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青以たちが講堂裏の駐車場に向かって歩いていくと、青いレクサスの前で待ち構えていた紫織と尋海が一眼カメラを構えて激写した。
満開の桜をバックに青以と風間に挟まれ、両方と手を繋ぎ、嬉しそうに笑う万里。
それを優しく見守る父と叔父。
「……なんか、天国?」
シャッターを切りながら尋海はうっとりする。
「バカ尋海!見惚れてないで撮れ!ビデオも回せっつーの!寄りと引き、ぼかしも駆使しろよ!バッテリーは大丈夫だろうな⁈」
「は、は、はいィッ!」
紫織は意外とそういうことにうるさく、昭和のめんどくさい映画監督のように注文が多い。
何事にも妥協せず、完璧を求めるザ・A型なのだ。
尋海にやいやい言いながらも紫織は真っ白なスーツに身を包み、駿と手を繋いで優しく微笑む明日香を激写する。
肩に触れない長さのゆるふわカールの髪、胸元のパールネックレスと白いガーベラのコサージュが清楚で美しい。
「ママたちの中でも明日香さんがぶっちぎりで1番清楚可愛いな。さすが俺」
自分に自信が持てず、いつも余裕がなく慌ててオロオロしていた明日香を、この日のために紫織と尋海と希和で完全プロデュースしたのだ。
「歩く時は姿勢良く、目線は下げない。背中を丸めておどおどしない」
もっさりと伸ばしっぱなしだった腰までの長い髪を肩に触れない程度にバッサリ切り、ゆるふわのウェーブをかけ、淡い化粧を施した。
いつも口紅だけですっぴんだった顔は最旬のメイクのおかげで肌艶良く明るく輝いて見える。
「明日香さんはとても若々しくて愛らしいお顔立ちをしているんだから、下を向かないで姿勢良くするだけで幸せが舞い込む美人になれますよ」
希和にそう言われ、この半年、立ち居振る舞いや礼儀作法のお稽古をつけてもらい、駿と一緒に空手の形の稽古にもチャレンジした。
うつむきがちで猫背だったため、暗い印象を与えがちだったのが、今では別人のように溌剌として明るい印象に変わった。
「お母さん、可愛くなったね」
お稽古をはじめて2ヶ月くらいの時に駿にそう言われ、明日香は開眼したのだった。
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