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「え?ジンベイザメ⁈」
万里と駿の話を聞いて茉由と紗弓が素っ頓狂な声をあげてハモッた。
「うん、女将さんがそう言うから俺らびっくりして生け簀に飛んで行ったんだけど……」
「ジンベイザメっていうのは冗談で、モウカサメを料理して出してくれたの。ネズミザメとも言うんだって。モウカサメの唐揚げ、ふわふわで軽くてすごく美味しかったんだよ」
万里がそう言って笑うと茉由と紗弓は再び目をまん丸にして驚いた。
「サメを?」
「食べちゃったの⁈」
「うん!煮魚も美味しかったよ」
「え〜!」
そこで市成がくすくす笑ってふたりに言う。
「モウカサメはスーパーで普通に売っていますよ。安くて美味しいです。今度唐揚げと煮付けを作りますね」
「え?ほんとですか⁈でも、なんかちょっと怖いな」
紗弓がそう言うと横から要が顔を出して手を上げた。
「鷹夜さんのサメ料理⁈俺食べたい!」
「やだ、要さん、私だって食べますからね!サメは怖いけど、鷹夜さんの手にかかれば絶対美味しいんだから!」
「ランチメニューに取り入れますか?」
市成がくすくす笑いながら言うと茉由は再び素っ頓狂な声をあげる。
「え〜!」
カウンター周りで賑やかに談笑する面々を見つめ、青以と風間はピアノの横の席で穏やかに笑った。
今日、喫茶雨音は17時で閉店し、夜は貸切で万里と駿の入学祝いパーティを開いてくれているのだ。
料理は完全に市成におまかせしていたのだが、一同が来店すると店内はビュッフェスタイルになっていて、真っ白なテーブルクロスが敷かれた上に数々の料理がズラリと並んでいた。
しかも料理はホテルなどでよく見る銀色の保温式の器に入っていて、時間が経っても冷めないようになっていた。
これにはブッフェ番長の紫織、そしてブッフェマニアの尋海、万里、駿が大感激した。
「例の店」ではいつものように胸焼けしてほとんど食べられなかった青以も、市成の野菜多めで優しい味つけの料理を少しずつ色々食べることができた。
なにより外食でこれでもかとご馳走を食べた後はいつも市成の珈琲が飲みたくなる。
「お昼に伺ったあのお店、凄かったですね。多国籍で」
芳ばしいブラックコーヒーをゆっくり飲みながら風間がそう言うと青以は苦笑した。
「行くたびに品揃えが増えていくんです」
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