エイプリルフール同窓会

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 ビールが運ばれて来た。 「今日は五年間の成果を話そうぜ」乾杯の後、キンゾーがジョッキをテーブルに降ろしながら言った。 「まず、言い出しっぺの俺からだ。お前たちは知らないだろうけど、この業界では有名な音楽事務所の人が、路上ライブやってる俺の歌を聴いてくれたんだ。それで、その人が推してくれて、俺、テレビドラマの主題歌を歌うことになったんだ」 「なんてドラマだ?」 「四月から始まる新ドラマ――『そして誰もいなくなった?』ってミステリードラマだ。明後日放送するんだ」  嘘だと丸分かりだ。けれど、今日はエイプリールフールだ。いいんじゃないか? 「そりゃ楽しみね。じゃあ、次は私」と、エリカが手を上げる。「私ね、NHKの朝ドラのオーディションが受かったんだ。主人公の友人役」 「で、いつから出演するわけ?」 「三週目から。高校時代の友人の役だから」 「朝ドラの脇役やって、注目された俳優も多いみたいだし……期待してるよ」  撲はエリカの嘘に付き合う。エイプリルフールなんだ。 「撲はカドヤマ文学賞の優秀賞を貰った。来月授賞式に行ってくる」  もちろん嘘だ。一次選考で落とされた。 「やったな、ユースケ」 「みんな夢を叶えたね」 「乾杯だ」  撲たちは声を揃えてジョッキを合わせた。 「今日はエイプリールフールだよな」  と、僕はジョッキのビールを一気に呷る。 「そうね、今日はエイプリールフールだもんね」  エリカがくすっと笑う。
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