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青さんのその言葉を聞き、私は自然と何度も頷いた。 「それは私も同じです。 私だって、私にとって青さんはそれくらいの男の人です。 私の心の奥底に沈んでいる望みを聞いてくれて、本気で叶えようと動いてくれる男の人。」 「お前の望みはちっこすぎてあんなの誰でも叶えられる。」 「そうなのかもしれない・・・。 そうなのかもしれないけど・・・」 上手く伝えることが出来ないもどかしさで、この目に涙が溜まってくる。 「私が苦しくて悲しくてどうしようもなかった時・・・、それくらいだった時、そんな私に1番欲しかった気持ちと言葉を渡してくれるのはいつも青さんだった。」 両手で一平さんの第2ボタンを胸の前に抱き締めながら、泣いた。 「このボタンまで渡してくれたのは青さんだけだった。」 「・・・そんなの早く捨てろよ。」 「捨てないよ・・・。」 「早くタンスの奥底に仕舞っておけ。」 「仕舞わないよ・・・。」 青さんは苦笑いをしながら私から目を逸らしてしまう。 「顔に精子ついたままだぞ、早く拭けよ。」 「青さんのだから汚くないよ。」 「汚ねーから・・・。 俺のなんてめちゃくちゃ汚ねーだろ・・・。 俺はキモいしダサいし汚い男なんだよ・・・。」 「それなら、私なんて余計なコトばっかり言うしオナラばっかりするし・・・結構嘘つき女だよ?」 「どうせちっこい嘘だろ? 俺の嘘なんてもっとヤバい。」 「私の嘘だって結構ヤバい。」 「“結構”レベルだろ? 俺の嘘はドン引きするレベル。」 「私のことを女としてめちゃくちゃ愛してるのに嘘付いてた青さんに私全然ドン引きしてないよ?」 「確かに・・・。 “ほぼ兄貴”だとか“ほぼ友達”だとか言っておきながら、お前の高校入学以来ずっと会ってないのにこんなに好きとか絶対ドン引きされると思ってた。」 「だから高校の入学式からずっと会ってくれなかったの?」 「まあな。ほら、俺って基本的には思ってること言う男だから。」 「それなのによく私のことを拾ってくれたね?」 「拾うだろ・・・それは、拾うだろ・・・。」 「可哀想だから?」 聞いた私に青さんはゆっくりと私のことを見た。 「望は可哀想だよ。」 「“青さんは大きいな”くらいの“可哀想”っていうのも嘘だったね。」 「それはマジ。」 「嘘だぁ~!!それこそ嘘じゃん!!」 「だってお前、俺のことが本気で“デカイな”と思ってるだろ?」 「それは・・・うん。 ・・・え、ズル。」 「俺は狡い男でもあるんだよ。」 「私だって狡い女でもあるよ? 青さんの弱みを握ろうとしてるくらいだし。」 「俺の弱みを握りに来た奴が俺に簡単にスーツを着せるとか笑わせんなよ。」 「ね、一気にお仕事モード。」 「敢えて止めなかった?」 「うん、みこすり半だった青さんが可哀想で。」 「・・・・・・・マジでそれ忘れて、頼むから忘れて。 あ・・・、これマジの弱みじゃん。 マジで会社売ることになんのかよ、みこすり半で・・・。」 めちゃくちゃ深刻な様子になった青さんには大きな声で笑ってしまった。 「あまりにも青さんが可哀想だからこの弱みには気付かないフリをしてあげる!! 私は“ダメ秘書”だからね!!」 「いや、素晴らしい秘書さんだと僕は思いますよ。」 青さんが社長のキャラでそう言ってきて、段ボールの上に置いてあったティッシュからティッシュを抜き取り私に渡しに来てくれた。 それを私は受け取り、顔と胸に掛かった青さんの精液を拭っていく。 それから掛け布団で身体を隠し、青さんのことを見上げた。 「座りますか?」 「このままでいい。」 「お仕事の話ですよね?」 聞いた私に青さんは頷き、青さんが声を出す前に私は声を上げた。 「私は青さんの会社の社員ではありませんし、私は“ダメ秘書”なので私の雇い主は増田清掃でもありません。 私は小関の“家”の秘書、加藤の“家”の者です。」
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