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だから一生懸命笑いながら青さんと会える瞬間を待っていた。 でも、青さんは全然現れなくて・・・。 全然現れてくれなくて・・・。 それには悲しくなり、それには虚しくなり・・・ 「青さ~~~~ん!!! 来たよ~~~~!!!! 玄関まで迎えに来てよぉぉぉぉ!!!!」 我慢することなくそう言った。 そしたら・・・ 向こう側から結構大きめの笑い声が聞こえてきて・・・ リビングに続くであろう所から青さんが現れた。 スーツでもなく私服でもなく、まさかのボクサーパンツ1枚の姿で・・・。 「ハレンチ・・・!!! 彼女さんとエッチをするのは時間も見ながらにしてくださいよ!!! 今日のこの時間にうちらちゃんとアポ取ってるのに!!!」 私の言葉に青さんは楽しそう笑う。 凄く凄く楽しそうに・・・ 凄く凄く意地悪そうに・・・ そんな懐かしい顔で笑って、彼女さんの横を通り過ぎ、玄関に一歩も入れていない私の方に来て・・・ 「・・・・ゎっ」 私の腕を引っ張り、家の中に入れてくれた。 「色気のない声出すなよ、全然変わってねーな。」 そんなことを言って、チラッと一平さんのことを見た。 「こいつと顔を合わせたくないから出ていかなかったんだよ、空気読めよ。」 「青さんこそ空気読んでくださいよ。 今日初出勤の私にこんなにハレンチな場面を見せるとか、酷い雇い主です!!」 「雇い主は増田清掃だろ? 俺はお前の出向先に選ばれた会社のただの社長。」 「それに私、家政婦みたいなこともするんですか? 私は青さんの家からワンスターエージェントに通わせてくれるという話しか聞いていませんでした。」 「なんだよ、俺の飯は作れねーの?」 「青さんって私が作るスイーツが不味いって言ってたからな~。」 「そんなこともあったな、懐かしい。」 「そんなことばっかりでしたよ。」 私の文句にボクサーパンツ1枚の青さんは凄く楽しそうに笑っている。 凄く凄く楽しそうに・・・意地悪な顔で笑っていて。 「すみません、そういうことなので・・・。」 急に営業スマイルで彼女さんにそう言うと、彼女さんは驚いていた顔をもっと驚いた顔にさせ、困ったように笑った。 「そういう方だとは気付きませんでした。」 「この姿の方が変に敵を作らなくて楽なんですよね。 余計な掃除をするのは手間なので。」 「私のことも今掃除をしたんですか?」 「朝っぱらから突撃してきたのはそちらですよね? まあ、ご覧の通り今回はそちらの財閥の駒をこれ以上相手にすることが出来なくなりました。」 青さんが営業スマイルからまた意地悪な顔になり、私のことをまた一歩、家の中に入れた。 「こっちの財閥の可哀想なネコを拾うことになったので、な?」 「ネコって酷いです。 せめてウサギが良い。」 「ウサギって性欲ヤバいらしぞ?」 「・・・やっぱりネコで。」 私の返事に大きく笑った青さんがそのままの顔で彼女さんのことを見た。 「綺麗な身体のまま返してあげられて良かった!!」 そう言った青さんに彼女さんは悲しそうに笑って・・・ 「演技ではなく、私は青さんのことが本当に好きでしたよ・・・?」 「ワンスターエージェントの社長、星野青がな。」 「酷い・・・。」 「それはお互い様だろ。 俺の会社が欲しい永家財閥の駒となって俺に近付いてきたのは最初から気付いてた。」 私の腕を掴む青さんの手に力が入る。 そして私のことを見下ろし・・・ 「お前もだろ、望(のぞみ)。 お前のところの財閥も俺の会社が欲しいからな。」 そう言ってきた青さんに私は頷いた。 「はい、なので青さんの弱みを握りにきました。」 譲社長からの任務をそのまま伝えると、青さんは大きな声で笑った。 「なんだよそれ!!!!」 爆笑した青さんが私から視線を移し、扉の外にいる一平さんのことを見詰めた。 でも、その口からは何も出てくることはなくて。 青さんの口からも一平さんの口からも何も出てくることはなくて。 私も一平さんに視線を移すと、一平さんはいつもと変わらず優しい顔で私のことを見ている。 「じゃあね、望さん。」 いつからか私のことを“望”ではなく“望さん”と呼び始めた一平さんに、私は頷いた。 泣きそうになるのを一生懸命我慢して、頷いた。 でも・・・ 「一平さ~~~~んっっっっ」 青さんの家の扉が閉まってから数秒後、号泣しながら一平さんの名前を叫んだ。 青さんに抱き付きながら叫んだ。 「きたねーなっ!! 俺に抱き付くなよ・・・っ」 「だって、だって一平さんが・・・って・・・青さんボッ○してますよ、さっきまでしてなかったのに。」 「おま・・・っ女がボッ○とか言うんじゃねーよ!!」 「・・・本当だ、私が誘惑しても何の反応もしなかったのに。」 「お前は早く永家財閥へ帰れ!!」 「いくら元とはいえ元彼女さんに酷~い。」 「まだ彼女になってなかった段階だよ!!」 それには号泣しながらも笑った。 昔から私のことを誰よりも可愛がってくれる青さんに、泣きながらも笑った。
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