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「レイ様も歩み寄ってください」
歩み寄るなんて緊張しすぎてできそうにない。
さっきだって逃げて隠れてしまったくらいなのに。
「歩み寄ったけど、それはあからさますぎる」
「何を言っているんですか。これまで何度も主張する機会はあったんですよ。それなのにレイ様が引いていらっしゃるから、他国のΩがうろついたりするんです」
ジュリは声を荒げる。
他国のΩ……。
「レイ様がいらしてからは城内にはΩやαの入城には許可が必要になったので安心してください。以前は大臣や要人の娘や息子というΩが城内に入り放題でしたから。リュート様は誰も相手にしていませんでしたよ」
「あー、でもリュート様は大分持てそうだものね」
結婚適齢期である第一王子が独り身ならばいくらでも相手はいるだろう。
あの美丈夫だ。相手がいない方がどうかしている。
「レイ様が遠慮することは無いのです。もっと胸を張ってください」
ジュリは黒いラインの入ったジャケットを僕に着せかけた。
「マントはリュート様の物を付けますか?」
ジュリは冗談交じりにそう言って笑った。
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