二皿目

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倒した犬っころを捌いてとりあえず食べてみようかとも思ったが、捌こうにもナイフの類は一切持ち合わせていない。そもそもそんな解体技術もない。 まぁ、あったところで何を食べてるか分からないから美味くはないだろうと早々に諦めた。 昔、近所の犬を可愛がっていたので、気分も良くないし。 ー ぐぅ…… さすがに限界になったらそんなことも言ってられないので、一応の相応の覚悟も決めておくことにする。 「なんとか倒せたけど、あれが魔物ってやつか。見た目は狼みたいな奴だけど、角が生えてたな。何度か刺されそうになった」 回避に専念したおかげで、運良く木に突き刺さって抜けなくなったところを滅多打ちにして何とか勝利を収めたが……次も同じ作戦で上手くいくとは思えない。 「せめてもっと強い武器を……ていうか防具すらないんだよなー!転生お約束のチートスキルなんてものもないし!無理ゲー過ぎるだろ」 テンプレの「ステータス!プロパティ!」と何度叫んでも、何かが出てくる気配はなかった。たぶん、あちらで過ごしてきた姿のまま、何のテコ入れもなくこの世界に送られたのだろう。 「へっ!まぁ、カレーアンチの女神なんかに貸しを作るなんて真っ平御ごめんだったしね!手助けなんてこっちから願い下げだ!」 ヒノキノボウを握りしめる手がズキリと痛む。この短時間で身を守るために必死に握りこんだせいで、豆ができたみたいだ。 「これあと一戦やったら豆が潰れそうだな」 でもやらなきゃならない。やらなきゃこっちが奴らの腹に収まることになる。 女神に復讐するにも、俺はまずはこの森で生き抜かなければ。 「なにくそ!」 ヒノキノボウを気合いも込めて握りしめると、女神の嘲りを心の炉に放り込み、弱気になりそうな気持ちを奮い立たせた。
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