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「いい加減に起きなさいよ人間。いつまで寝てるのよ」
「ん、んん……うっさいなぁ……」
少し怒りを含んだような声が聞こえた気がした。近所の酔っぱらいが叫んでいるのかと思い、無視をしようと決め込んだが、声はさらに大きくなってついには耳元で聞こえ始めた。
「うるさいですって!?この私がわざわざ出迎えてやったというのになんて言い草よ!」
「んん……私って誰だよ……。いいから寝かせてくれよ。明日も仕事で早いんだって」
「私だって明日は早いわよ。他の神たちと会議があるのよ。だから、さっさと起きて転生の準備するわよ」
「転生?……ん、んん゛ーー!ったく!なんだよもう」
ゆさゆさと身体を揺さぶられ、いよいよ眠りを妨害された俺は怒りに任せて上体を起こすと大きく伸びをして相手をしょぼつく目で睨みつけた。
「ちょっと!そんな怖い目で睨まないでくれる!?私が誰だか分かってるのかしら!?」
「知らん!目つきが悪いのは生まれつきだ!あと無理やり起こされたのも関係してるかもな!」
「なんて野蛮な男。蛮勇ってやつかしら……。ま、まぁいいわ!教えてあげる。私は女神 ヴェスタ。慈愛の女神よ。今はある世界を見守る平和の女神でもあるの」
「女神だ?」
「うっ……!なんて極悪な目つき。本当に英雄の素質あるの!?」
無理やり起こされて不機嫌なのを隠さずにいると、女は俺の眼光に怯んだのか半歩下がった。
いいぞー。そのまま二歩でも三歩でも、なんなら延々下がって目の前から消えてくれ。
「神だの女神だの転生だのわけ分からん。宗教勧誘なら他所でやってくれ」
ダメ押しで、さらに目に力を込めて睨みつけると女神と名乗る女から小さい悲鳴があがった。
「こ、この私に……女神の私に向かって何たる無礼な。ま、まぁ、いいでしょ。私は慈愛の女神ですもの。その無礼も目を瞑ってあげる」
ぴょこぴょこと外ハネの長い前髪を揺らして女神は怒るが、すぐに我に返ると二三深呼吸をして落ち着きを取り戻す。あまりにうるさいので、こっちは目が冴えてしまった 。
冴えた目で眺めてみれば、女神と名乗るだけあって結構な美人さんだった。ただ、その高慢ちきな言い草で好感度はマイナス振り切ってるけどな。
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