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「お前が誰かなんて知らない。俺の崇める神様は二柱だけだ」
「あら、意外と信心深いのね。その神って誰なの?」
「ガネーシャ様と宗次様だ!」
「ガネーシャ……は知ってるけど、宗次って誰よ。聞いた事ないわね……」
「はっ!宗次様を知らないだって!?そんなんでよく神様してるな!一代でカレーチェーン店の母体を作り上げ、〈 CoCo壱番屋 〉の名を世界に知らしめた経営の神にしてカレーの神様だぞ!ボランティア活動も率先して行い、人としても徳高い、まさに生ける神様のような人だ!」
漫画の神様が手塚治、バイクの神様が本田創一郎、ロックの神がエルヴィス・プレスリーなら、カレーと慈愛と経営の神は宗次さんで決まりだろう!常識だ!
「知らないわよ!人間じゃない!それもまだ生きてる人間だし!」
「いずれ、世界三大宗教に名乗りをあげる予定だ。〈 カレーハウス教 〉の始祖としてな」
「そんなスパイス香る宗教に誰が入るのよ。本人の知らぬところで好き勝手に……。まぁ、それだけ徳高い人間ならいずれは神になることもあるかもしれないけど……。そ、それより今は私の話でしょ!」
その場で地団駄を踏んで話を遮ると、女神は三歩下がった距離を一気に詰めて俺の鼻頭に人差し指を押し付けた。
「私、神様!あなたは人間!神様を前にしているのだから、畏れ敬いこうべを垂れてつくばいなさい!」
大袈裟に胸を張り、仁王立ちで俺の前に立つ。
さも、崇め奉るのが当たり前のような言い草に俺も呆れて言葉も出なかった。
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