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『優希』
2024年。2月24日。土曜日。
軽快なアラーム音で無理やり起こされる。
なんで休日なのに、こんなに早起きしなければならないのだろうか。
まぁ、殴られるよりはマシだししょうがないか。
スマホの画面を確認し、アラームを止める。
スマホには5時55分と表示されており、時刻の下には非表示のラインの通知が1件あった。
指紋認証を済ませ、そのラインを開く。
綾香からだった。
正直驚いた。
綾香とは2ヶ月ほど連絡がつかず、音信不通な状態だった。
以前別れる前に、
「数ヶ月連絡が取れないかもだけど心配しないでね」
と言われていたので、追いラインは行わないようにしていたが、本心すごく心配していた。
生きててよかった。
自殺したのかも、なんて考えたことも何度もあった。
虐待、性的虐待をされている事実も知ってしまったし、本当に生きているか不安だった。
おれは、少しの焦りと興奮で、無我夢中になり返信のメッセージを送った。
すると、
いつ頃会える?
と直ぐに返信が来たので、おれは
12時以降ならいつでも会えるよ〜!
と元気に返信をした。
テンションが上がる。
最近は、この感情が”愛”だという推測が、だんだんと確信へと変わってきている。
やっと愛という感情をしれた。
綾香には感謝してもしきれない。
しかし、スマホを見ると時刻は7時を回っていた。
まずい。
変にテンションが上がって浮かれてた。
おれのお母さんは休日、大体7時から10時の間に起きる。
お母さんが起きるまでに、朝食を作り始めないと殴られてしまう。
急いでリビングへ向かうが、もう遅かった。
扉を開け棒立ちになる。
そこで制止してしまう。
リビングにはイライラしながらソファーに寝転びスマホをいじるお母さんが居た。
ソファーの前に置いてあるテーブルにはエナジードリンクの缶が1本置いてあった。
母、オールしやがった。
やばい。
殴られる。
時刻は既に7時を数分回っている。
お母さんには、7時までに起きて、朝食を作るように命令されていた。
「今何時?」
お母さんがおれに問う。
「7時3分です」
おれは、さっきスマホで見た時刻を答える。
「はぁ?7時4分な!」
母はこう言い、机を殴る。
エナジードリンクの缶がカッコーンと音を立て、転倒し転がる。
中身は空だったようだ。
「ごめんなさい」
転がるエナジードリンクに目線を配り、暗い声で謝る。
完全にしくった。
母はその辺に散らばっている洋服を踏みながらこちらへやってき、おれを殴った。
横腹を殴る。
左横腹。
お母さんは毎回ここを殴る。
1箇所に痣を集中させれば、生まれつきの痣と言い訳できるからだ。
1発2発3発4発5発6発。
何度も何度も殴られる。
死にたくなった。
だけど、綾香はおれよりも辛い現状で、必死に生きているんだよな。
おれなんかが、死にたいだなんて言える資格はない。
綾香の方が、よっぽど辛い日々を送っている。
何度も殴られた。
息はできなかった。
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