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『綾香』
-少し酔ってしまった。
私は、車に乗るとよく車酔いしてしまう。
お母さんに
『ごめん、少し酔ったから窓開けていい?』
と訊くと、お母さんは
「全然いいわよ」
と優しく返してくれた。
窓を開け外の空気を吸う。
肺が、熱かった。
燃えるような熱み。
辺りを見渡すと、火の海だった。
車は転倒し、お母さんが座っていた前方付近ぐちゃぐちゃに潰れていた。
「おかあ……さん?」
お母さんの身体には車の様々な部品が突き刺さっており、下半身は殆ど潰されていた。
「や、だぁ、。」
私は泣き、お母さんに抱きつこうとする。
お母さんの元へ必死に行こうとしたが、あと少しのところで誰かも分からない男に止められる。
その男性は、窓から私を救出し、そのまま私の手を引きまだ火の上がっていない方へと駆けて行った。
別れ際、お母さんが何かを言っている気がしたが、火の音のせいで聞き取れなかった。
私はその男性に無心になってついて行った。-
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