第一章【誘い】

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「そ〜いえば綾香、なんで優希のこと好きになったの?」 ハグを少しづつ解きながら、菜々美にいきなりそんなことを言われる。 私は少し恥じらいつつも、菜々美の質問に答えた。 「ん〜、なんでって、言われたらちょっと難しいけど、好きなところならいっぱいあるよ? 」 私の答えに対し、菜々美はウキウキの表情と声色で 「えー!優希のどこが好きなのよ〜」 と目を輝かせテンションを上げていた。 「ちょっと恥ずかしいかも」 と私は菜々美の質問をかわそうとしたが、菜々美は容赦なく 「どこが好きなのか教えろよ〜」 と攻撃を続ける。 ほんとに無邪気で元気な人だなぁと思いながら、私はしょうがなくその質問に答える。 「1番好きなところは匂いだけど……」 顔を赤面させ、目線を逸らしそう言う。 私はきっと匂いフェチなのだ。 優希からは本当に良い香りがする。 嗅ぐ度に凄く興奮してしまう。 あぁ、私って気持ち悪いなぁ。 そんなことを思っていると、菜々美は 「恥ずかしがらずにもっと教えてよぉ〜!」 と私の肩を揺する。 「わかったよ!わかったからとりあえず私を振り回さないで」 私は笑いながら菜々美に交渉を持ちかけた。 菜々美は 「んじゃ教えてね」 と笑いながら私の肩を話してくれる。 「私、髪の毛長い男の子が好きだから、優希のウルフも好きだし、痩せてる不健康そうな男の子もタイプだから、優希のガリガリな身体(からだ)も、不健康そうな目の下の(くま)も、背の高い所も、全部大好きだよ」 恥ずかしかったけど、私は優希の好きなところを言いきった。 自分の性癖を全て暴露したような気分になってしまい、心底恥ずかしかった。 菜々美は私に 「性癖歪んでるね」 と笑いながらツッコんだ。 私はそれに対し 「別にいいでしょ!」 と笑いながら反抗する。 「そ〜いえば、優希の事いつ好きになったの?」 そ〜いえば言ったこと無かったなぁと思い、いつ頃好きになったか思い出そうとするが、正確に思い出すことも出来ず、恥ずかしさもあって隠すことにした。 「あんまり覚えてないや。気がついたら好きになっていたみたいな。だけど、きっかけは多分優希の匂いだったと思う。」 「やっぱり綾香は匂いフェチだなぁ」 と菜々美に核心をつかれてしまい、私は 「そ、そそんなことないよぉ」 とテンパりながら噛み噛みの返事をした。 菜々美は 「冗談だよぉ」 と笑っていたが、実際匂いフェチは事実だ。 「っていうか、優希と初めて会ったのって高校二年生へ上がる時のクラス替え?今クラス一緒だしね」 菜々美が急に話を展開してきたので、私は少し返事が遅れてしまう。 「初めて会ったのは高二じゃないかな〜。けど、初めて喋ったのは高二やった気がする。高一の時も遠くから『タイプだなぁ』って思いながら見てたよ」 私は優希の可愛らしい仕草や顔を思い出し、「うへへ」と少し気持ち悪い笑い方をしてしまう。 「え、ストーカーじゃん!」 菜々美にそうツッコまれてしまい私は 「失礼だなぁ。学校だしストーカー判定ではありませんー!」 私は頬を膨らませ、菜々美に抗議する。 「まぁ今はストーカーから友達へと昇進できたしね」 「だからストーカーじゃないって!」 私たちはそんなやり取りをしながら笑いあっていた。 「ごめんごめん。それで、優希とは結構仲良くしてるの?」 「んーービミョーかな。たまに休み時間話すぐらい。なかなかアタック出来ないんだよね〜。でも!LINEでは仲良くできてるの!!!前なんか寝落ち通話しちゃって、優希の寝息可愛かったな」 またしても私はうへへと少し気持ち悪い笑い方をしてしまう。 「え!そんなに発展してるの!んじゃもういっその事デートに誘っちゃえば??」 菜々美が興奮したように立ち上がり、私を見下しながらそんな提案をいきなりした。
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