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盲目ながらに神学を筆頭にあらゆる方面に秀でた大変優秀な人物で、何より真面目で仕事熱心だ。それ故に、超難関と言われている神父から神官への転身に成功したのだろう。
細やかな気がきく、穏やかな青年。ルークはこの青年に始めて会った時から好印象をもっていたのだが、それと同時にどこか危うさも感じていた。ほの暗い闇ような危うさ。盲目だから故なのであろうか? だが、そのようなハンデ、この青年はものともしないだろう。ルークの目にセフィの心根は綺麗に澄んでいるように映っており、信頼出来る人間の一人と感じていた。
それに、ライサン・セリクス、リチャード・ライチェルという、奇人変人な二人の傍に職務上いなければならないルークからすると、彼のような至極まともな思考回路の持ち主である者は(普通の人とも言う)、貴重であると同時に癒しの元でもあった。
「ウインター神官長補佐がそうやってお相手するから、セリクス神官長も面白がって揶揄いになるのじゃないでしょうか?」
「わかっている。それはわかってるんだが、あいつの態度、顔、声、すべてが癇に障るんだ」
神官らしからぬ言葉を口にしてルークが目を血走らせると、その怒りのオーラを感じ取ったセフィは顔を引きつらせた。
セフィはこれ以上この話題を口にする勇気がなく、先程ルークの付き人の神官が、彼とライサンを探していたのを思い出し、それを口にして話題を変える。
「そういえば先程、ラテーヌ神官がウインター神官長補佐を探していましたよ」
「ラテーヌが?」
自分の付き人である青年の顔を思い出して、ルークは首を傾げる。
「ええ。何でも、予定よりも早くお着きになられたそうで、セリクス大神官様を来賓室にお通ししたとの事です」
「ッ!?」
それを聞いた瞬間
バビューーーーーーンッ
と音を立てて、ルークはいつものように神足で駆けだしたのだった。
「……え、…………え~っと?」
そんな様を初めて感じた新人のセフィは、ルークのスタートによっておきた突風で神官服の裾を捲れ上げさせながら首を傾げていた。
リュカ様
リュカ様
リュカ様あああ~~~~っ!
二年ぶり……そう、二年ぶり。
二年ぶりの再会なのだ。
セイントクロス神殿本部より、ライサンと共にこのアシェイラに移動になって早二年。その間、一度もリュカ老師と会う機会は訪れなかった。
本部とアシェイラ支部。その距離は思った以上だったと言えよう。
しかし、リュカ老師は最近、内部指揮から外部指揮に変更になったのだ。本部内部の総指揮をとる内部指揮と違い、外部指揮はその名の通り、支部の監査が主な担当だ。年一回の三支部を見回る支部監査で、少なくとも年に一回はその顔を見る事が出来るのである。
今回は監査ではなく、顔見せにアシェイラ支部の方に寄るとの連絡が三ヶ月前にきていた。
アシェイラの前に、サンジェイラとディエラに寄ってからの顔見せだというので、もっと遅れると思われていたが、思いのほか、他の二国の顔見せが早く終わったらしい。
「お帰りなさい、ウィンター神官長補佐。セリクス大神官様が来賓室にてお待ちです」
神官長館に大急ぎで戻ったルークを出迎えたラテーヌの言葉におざなりに頷くと、階段を駆け上がり、来賓室のある二階へと急ぐ。
そして……
は~は~は~
ゴクンッ
息を整えて、一つ生唾を飲み込み。
コンコン
ドキドキしながらノック。
次の瞬間
「どうぞ」
聞こえた穏やかな声にルークは目を見開き、目の前の扉を荒々しく開けた。
「遅かったですねぇ、ルーク。セリクス大神官様が首を長くしてお待ちでしたよ」
モゴモゴモゴ
優雅に来賓用のソファに腰かけ、厨房からくすねた例のスティック状の干菓子を口にしながらそう言ったのは、先程まで自分が追いかけていた上司。
「セ~リ~ク~ス~~ッ!」
いつのまに神官長館に戻っていたのか、ライサンはルークよりも早くリュカ老師の来訪を聞きつけ、来賓室に来ていたのだ。
「でも、大丈夫です。おもてなしはきちんとしておきましたからね」
「このお菓子は、本当においしいのう」
モゴモゴモゴ
ライサンの食べているのと同じお菓子をリュカ老師もおいしそうに頬張っていた。
まだお茶類が出されていない様を見るからに、ライサンが厨房よりくすねた干菓子の一つをリュカ老師にあげたのだろう。
「ふぉふぉふぉふぉ」
モゴモゴしながら嬉しそうに笑う、リュカ老師の白い鬚に干菓子の屑がついていた。
その様子を見たと同時に、ルークの中に養い親と再会できたという感動の嵐が吹き荒れる。(何故?)
「リュカ様!」
ルークがそう叫ぶと、リュカ老師は食べかけのお菓子をテーブルの上に置いて、神官服の袖で口の周りの鬚についた菓子屑を拭った。
「ルークや」
小さな両腕が広げられる。
「リュカ様~~~~!」
頬は薄紅色に紅潮し、瞳は恋する乙女の如く。
ルークはリュカ老師の膝元に跪くと、その膝に思いっきり抱きついた。
「リュカ様! ずっと、お会いしたかったです」
そんな熱っぽいささやきの後、うんうんと頷くリュカ老師の膝(鬚)の中に顔を突っ込み
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