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悠貴と椎奈の場合
「あ!こんなとこにいたー!冴香ちゃんと優花ちゃんに嘘までつかせてー!あたしビーチまで捜しに行ったんだ、ぞ…って、何やってるの?」
パパがウチに合わせ鏡で後ろやサイドの長さを確認してくれている、正にその瞬間、トレードマーク?の棒付きキャンディーを口にした秋さんがお風呂場に荒々しく現れた
が、ウチ達の姿にお怒りは霧消したよう…
ちょっと頭を上下左右に動かしてみる
…うん!これならアンツィオのスコープも覗けるし、P320を使う時も視界に入らない!
サイドは耳の前だけ顎のあたりまで伸ばしてて、あとは耳に掛けるから、基本ウチだってカットには手が掛からないはずだ
ロングの秋さんやハルさん、美優ちゃんに比べれば、の話だけど
「見ての通りですが…今日の午後はお二人のカットする約束でしたからね…あ、明日は冴香さんと優花ちゃんの予約が入ってますからね!」
パパがウチの、美優ちゃんがハルさんの、布を外してくれる
ここからは…パパは席を外して、ウチは別に見られても平気なのに…美優ちゃんだけが残って、髪を洗ってくれるのだ
あ、勿論防水シートを着せてくれてはいるし?ちゃんと水着着てるし!
美優ちゃんはそのままの格好だけど、カフェの営業が終わっているので普通にファストファッションのTシャツと短パン姿だ
「えっと、じゃあシイさんから行きますねー?あ、秋さんは避難してください、びしょ濡れになっちゃうと思うので…」
ちょっとネコ聞いてよ~などと甘えながら秋さんがパパにしなだれかかりながら浴室を出て行く…入って来た時とは全然違う様子で…恋する乙女モードへの変身が早い…
ウチはお風呂の椅子に移動して、湯槽の縁に首を乗せる。当然タオルを畳んだクッションが敷かれた上にだ
顔にも同様のタオルが置かれ…化学の実験をするかのようにシャワーの温度を調整してくれている美優ちゃんが横目で見えた
いや、そこまでしなくても…
「ね、猫さんからシイさんは40度、ハルさんは39度だって聞いてますので!で、ではシイさん、まいります!か、痒いところがあったら仰ってくださいね?」
…パパめ、美優ちゃんに何を吹き込んだのやら…
そう思わざるを得ないくらい丁寧にウチの髪を流してくれている…あまりの気持ち良さに眠気が来そう…いかんいかん
シャンプー、リンス、トリートメントとウチの持ち込みの洗髪用品できれいにしてくれる
良い子だな~とかウチが考えていると身体を起こされて、流れるような手捌きでドライヤーで髪を乾かしてくれて…
「はい、シイさんお疲れさまでしたー、猫さんほど上手には出来てないと思うので…あ、あとこれでお顔を念の為拭いてくださいね?」
ショートのウチの髪はあっと言う間に乾かされ、美優ちゃんがお湯で絞ったタオルを手渡してくれた
あまりの手際の良さに思わず疑問が口をついて出てしまった
美優ちゃん、病院でもここまでするの?
「え?しませんけど…洗ってドライヤーで乾かすのを手伝う、くらいですね~?あ、男の人はベテランの看護士さんがされてましたから、あたしは中学生の女の子くらいまでですね~」
あ、中々にデリケートな年頃の子たちだな
だからあんなに丁寧なんだ
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