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夢乃のプレゼント
たっくんのバースデーパーティーはその後も大盛り上がりのまま瞬く間に時間が過ぎていった。
猫好きの店長さんが出してくれたカフェごはんはハロウィンと猫をコンセプトにしたとっても可愛くて美味しい洋食だったし、ジャックオーランタン風のパンプキンケーキももちろん最高だった。
舎弟の皆さんはちゃんとひとりひとり挨拶しながらプレゼントをたっくんに渡して、たっくんを照れさせては猫パンチを食らい。
灰士さんは予告通りたっくんが欲しがっていたボクシングのグローブをプレゼントして、たっくんの猫耳を感動でプルプルさせ。
可児くんは例の「たくさんあっても困らないもの」を渡して、「中身は言えないっすけど、今夜から使えますよ!」とニヤニヤしてたっくんを何故か激怒させた。
「こんなもん、使えるかっ!」
「え、使わない派っすか⁉︎ 飲むタイプの方が良かったっすかね」
「そういう問題じゃねえ!」
いったい何の話なのかさっぱりだったけど、とりあえずたっくんは真っ赤な顔してそのプレゼントを受け取ったようだった。
「夢乃ちゃんは何を持ってきたの?」
灰士さんが私に尋ねる。
「え、えーと……みんなの前だと恥ずかしいので、後でたっくんと二人きりの時に渡そうかなと思います」
モジモジしていたら、灰士さんは何故か可児くんや店長さんとゴニョゴニョと内緒話をし始め、その直後に突然「そろそろお開きにしようか」という流れになった。
確かに開始から二時間くらいはあっという間に経っていたけど、盛り上がっていたのに唐突なお開き宣言だったので私とたっくんは拍子抜けしてしまった。
「毎度ありがとうございました! あとは若い二人でどうぞ仲良くね!」
保護猫カフェの店長さんに見送られ、私とたっくんは二人で店を出ることになった。
「あいつら……余計な気を回しやがって」
たっくんがプレゼントの詰まった紙袋を抱いて可愛く文句を言う。
猫耳、外し忘れたまま外に出ちゃってるよ、たっくん。
言おうかなと思ったけど、可愛いから内緒にしておこう。
「まだ時間あるから、たっくんのお家に行ってもいいですか? プレゼントも渡したいので」
ドキドキしながら隣のたっくんを見上げると、たっくんは滝の汗からマイナスイオンの湯気を出しながら「お、おう……」と頷いた。
こうして私たちは緊張したままたっくんのお家へと移動した。
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