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「サンタ・マリア・デル・カルミネ教会の鐘だ」 マテオの瞳に光が射す。 「ああ……それが?」 「マリアの家の前で聞いた。その時は東から聞こえたんだ」 「それだけで、わかるのか?」 「大体ならわかるかもしれない」 鐘の音の響度で方角と距離を測る。 常人には想像も付かないが、音という磁針を得て一歩ごとに確信を増していく。 「どうだ? わかりそうか?」 ガスパロが口を開いたとき、鐘の音が止んだ。 「もう少し、もう少し手がかりがあれば……」 歩き過ぎて身体が重かった。 「出直した方がいい」 ガスパロの意見に同調しつつ、ここまで来てという思いがマテオの足をその場に釘付けにしていた。 「そうだ! 夜にもう一度来よう」 「え? 明日じゃなくて?」 ガスパロは呆れて肩を落とすが、マテオの情熱は盛んに燃えていた。
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