18人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
───
「夜は危険だろうか」
引き返すつもりはないが、襲われたときの恐怖が甦る。
「いまさら……カルロが殺されて警察が巡回してるらしい。むしろ今の方が安全かもな」
教会の鐘の音が鳴らされる時刻は大体決まっている。
マリアの家の前で聞いたのは朝。これから待つのは夜の鐘だった。
途切れた道の手がかりとなるか。
鐘が鳴り始めた。マテオは記憶の音と重ね方角を指した。
ガスパロを目として進む。方角は間違いない。
ただし響度では、おおよその位置しか特定できない。
鐘が鳴り止む前に足が迷う。
「住人にマリアという女が住んでいないか聞いてみるか」
とうとうマテオの足が止まるとガスパロが提案した。
マテオは俯いたまま沈黙している。
最初のコメントを投稿しよう!