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「おいマテオ……」
肩に置きかけてガスパロの手が止まる。
マテオは静かに歌い始めた。
「Sul mare luccica L’astro d’argento(海の上に輝く銀色の星)──Santa Lucia, Santa Lucia──」
夜の海岸の波のように、しみじみと寄せては返す。
いつの間にか人集りが出来ていた。歌うのを咎める者は誰一人としていない。
敬虔な顔つきで聞き入っている。
やがてソプラノが大波を運び、岸辺で弾けた。
天高く伸びて、星さえも瞬きを強くする。
マテオは煌めく星屑に包まれて見えた。
「天使だ……」
感嘆の声が洩れる。涙を流す者もいた。皆、陶酔していた。
自身の創り出す世界にマテオも入り込んでいた。
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