とてもやさしい村

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 つい小声になった千里の耳に、ごくりごくりと何かを飲み込む美里の喉の音が聞こえた。多分、コーラだ。ぷはーという音の後、 「正体がわからないから怖いんだよ。どっかの車のラジオが壊れて鳴りっぱなしとか、お隣でカラオケ大会してるとか、正体を知ればそんなもんなんじゃない?」 「それは……そうかもしれない……」 「確認しなよ! 外に出てさ」  美里の言葉に、部屋の時計を確認してしまう。――10時半。 「で、でも……10時過ぎてる……」 「門限なんて破るためにあるんだよ! ――だいじょーぶだって、注意してきたおばーちゃん、2軒隣でしょ? 見えないって」  それもそうかという気がしてくる。  それにおばあさんが門限を守っているなら、千里が門限を破ったこともわからないはずだ。 「……わかった。ちょっと、外、確認してくる……」 「いってらー」  ごとりと受話器を電話台に置き、意を決して千里は立ち上がった。  グレーのスウェットの上下で玄関に向かい、サンダルを履くと引き戸に向かい合った。  カチリと鍵を外す音がやたらに響いて、じわりと手に汗が浮かぶ。  そろそろと引き戸を開け……音を確認しようと、首だけ外に出した。  ひんやりとした草の匂いを感じた時、 「千里ちゃん。こんな夜中にどこ行くの」
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