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「だから鉄砲水で危ねえって言ったべ!」
「あのまま突っ込んでたら死んでたんだぞ!」
「ああ……よかった……無事で……」
ぽかんとして窓の外を見ていると、清掃当番が一緒だったおじいさんが泣きそうになりながら、
「こっちで雨が降ってねくても、川の上流で降ってればこうやって急に増水すんだ。――何かあったらどうしようかと思った……」
「千里ちゃん、こんな夜中に危ねえべ! どこにいくつもりで……」
口々に言われ、千里は狼狽えながら、
「だ……だって……! ――隠し事してたのは、そっちじゃないですか! 夜は出歩くなとか、社に近づくなとか、変な音も知らんぷりで……」
そう叫ぶと、村人たちはしんと静まり返った。――お互いに顔を見合わせ、気まずいような空気が流れる。
沈黙の中、人をかき分けて近づいて来たのは……村長だった。
「それは、こっちの気遣いのつもりだったんだが……不信感を持たせてしまったんだなぁ。すまなんだ」
「……気遣い?」
「……実は……『千里ちゃん歓迎セレモニー』を……秘密裏に準備してたんじゃ……」
その周囲で、村人たちは照れくさそうに笑っている。
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