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「千里ちゃん。これ、芋の煮っころがしと山菜の天ぷら。食べられるけ?」
「ありがとうございます、美味しそう!」
夕暮れに、2軒隣……と言っても、歩いて5分はかかる距離……の、おばあさんが訪ねてきた。
「村には慣れたかいね? なんもなくて、退屈しとらんか?」
ほっかむりをして、人の良さそうな笑みを浮かべて尋ねられる。
「スマホが使えないのは不便ですけど……かえってデジタルデトックスになっていいなって言うか……」
「……でじ……ップス? お菓子の名前け?」
「あっ、ご、ごめんなさい。えーと、体に良さそうだなーって」
千里が慌てて言うと、おばあさんは笑って頷いて、
「体に良いから野菜もたんと食べなね、いっぱい採れるけ。千里ちゃんには元気になってもらいてぇからよ」
「……ありがとうございます」
納期のためならお前なんか死ね、喜んで売上の犠牲になれと言われていたことを思い出すと、おばあさんの言葉は涙が出そうだった。
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