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潤んだ目で綺麗な夕焼けの空を見上げ、
「この村は空気も綺麗だし、夜暗いから星もよく見えそうですね。今日は夜更かしして星見ようかな」
「……星?」
訝し気な声に、千里はふとおばあさんを見た。……一瞬、鋭い目をしていたように見えたのは……気のせいだろうか。
「あ、はい……都会だと、全然見えないけど、ここなら……」
「星ってことは、夜遅くってことけ?」
「そ、そうですね……」
「いかんよ!」
突然の強い口調に、千里は手に持った器を落としそうになった。
「……夜遅くは、出歩いたらいかん。星を見るなら家の中からにしんさい」
「あ、あの……ちょっと庭に出て、見ようかなと思っただけで……」
「……10時には家は出んようにせないかんのよ。夜はな、どんな獣が出るかわからん。どうなっても知らんぞ」
聞きようによっては、まるで脅すような口調だった。
千里は戸惑いながら頷き、
「わ……わかりました。夜は、家にいますね……」
千里の言葉におばあさんはころりと表情を変え、笑顔を浮かべると、
「そうだな、それがよかんべ」
と言って、立ち尽くす千里に手を振り、帰宅していった。
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