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「違う、ちょっと……待って……」
受話器のスピーカー部分を手で塞ぎ、耳を澄ます。
風の音かとも思ったが……違う。不規則に、音階が上がったり、下がったりしている。
地の底から響くような、聞いていると不安になってくるような不快さを伴った音。それが、隙間風に乗って流れて来る。
「お経……みたいな……」
だが、お経ならこんなによくわからない音程の上がり下がりはないだろう。
耳を澄ませているうちに、さっき振り払ったイメージが蘇ってきてしまう。
……呪詛……儀式……。
そんなことを考えて、背筋が寒くなる。
「いやいや、こんな現代にそんな馬鹿馬鹿しい……」
だけど、ここは周囲と隔絶された、時を止めた村だ……。
途端に心細くなり、受話器を耳に当てた。
「もしもーし? お姉ちゃんー? 無事ー?」
「……ごめん、なんか……変な音が聞こえてきて……」
「え? どこから?」
「外……」
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