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私は、3か月以前には、セレブを自慢する婦人の家で飼われていました。
私が大人し過ぎる為なのか、イケメンのオス猫を購入した為なのか、セレブ婦人は、私を派手なペットゲージに入れたまま、張り紙と共にゴミ収集所に捨てました。
私を拾って呉れた コノおじさんは、若い時にギャンブルで身を崩した事を、直ぐに白状しました。
おじさんは初老に成り掛かって入て、貧相な顔です、常に御金に困っている様子ですが、とても優しいです。
私の為に、見すぼらしい毛布と新しい安物のクッションと段ボール箱を使って、狭い部屋に3ヶ所もの寝床を作って呉れました。
おじさんは、人付き合いと動物付き合いが大の苦手で、ずっと一人ぽっちで暮らして来た事も、正直に話して呉れました。
何時の間にか窓の外は、日が暮れていて暗く成っていました。
おじさんが、窓のカーテンを閉めて蛍光灯のスイッチを入れると、6畳の和室が、白い光に侘しく照らされました。
おじさんは、液晶テレビの画面をリモコンで消して。
「夕飯の支度をするか……」
と言いながら、直ぐに気が付いた様子です。
おじさんはキャットフードの袋を振って、何も入っていない事を確認すると情けない顔に生り、私の目の前に膝まづきました。
「ごめんな…… 何も無いんだよ…… 」
「ニャー、ニャー ……(わかっています)」
私は、大丈夫よ、という声を上げました。
おじさんは週に3日、アルバイトに行っていて、明日が給料日です。
昨夜にキャットフードの量は少なく成り、今朝に尽きていました。
給料日前の今夜に、私の御飯が在る訳が無いのです。
おじさんは夕飯を諦める為か誤魔化す為か、私を抱きかかえて座椅子に座り込み、私の頭を優しく撫で始めました。
そして、おじさんは、先ほどのテレビの国会議員さんの答弁を想いだすかの様に言いました。
「白夜、偉い人たちが、自分の罪を隠す様なウソを言ったり、自分の都合の良いように誤魔化すウソは、ダメだよな、酷い事だよな」
白夜は、おじさんが私に付けて呉れた名前です。
おじさんは学歴が無いから、白夜とは言わずに、しらや、と呼んだ。おじさんの精一杯の美しい名前を、わたしは気に要っています。
私は、おじさんに抱かれながら声を上げた。
「ニャー、ニャー、ニャォー(そうよ、そんな悪いウソは、だめよ)」
私は、空腹を紛らわすためにも、おじさんとズッと喋って居たかった。
おじさんの優しい声を聴きながら、心地よい眠りに就きたいと、想っていたら。
「白夜、僕は小さい時から、酷い噓つきだったよ」
と言って、おじさんが小学校4年生の時の、遠い遠い昔の少年時代に付いた、酷い大噓の話を語り始めた。
おじさんが少年時代に付いた、大人も巻き込む大ウソの話を、私は神妙な顔で聴きました。
だけど私は、おじさんの。優しい嘘つきが、好きです。
おじさんが語る、小学校4年生の時に付いた大ウソとは…… ?
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