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決行の朝
早朝の4時が、二人が打ち合わせた時間だったが、優作とヒロは、深夜とも想える3時半に支度を整えて、集合場所、廃屋の庭地に来ていた。
二人は並んで、緊張を解き解すかのように、夜空に冷たく霞む朧月を見詰めた。
二人の瞼には、聡史君や里美ちゃんがお父さんやお母さんが、近所の叔父さんや小母さんが、流れる煙の中を逃げ惑う姿が浮かんでいた。
《 みなさん、落ち着いて下さい!》
阿鼻叫喚の民衆を一か所に誘導して、優作が皆の前に立ち、叫ぶ!
《 みなさ~ん!今日は4月1日、エイプリルフールの日で~す!! 》
近所の人たちの顔が、一瞬唖然とするが、直ぐに綻ぶ。
《 えっ? そうよ、今日は、エイプリルフールよ、見事に騙されたわ 》
《 本当だと想ったぞ、凄いウソだったな 》
次々に、賞賛の声が木霊する。
暗闇の中、ヒロが持つ大きな手提げ袋の中を、優作が懐中電灯で照らして確認する。
中には、20個の巨大ヘビ玉が重なって入っていた。
ヒロが広げる用紙に、優作が懐中電灯を掲げると、そこには見事な、近所の家々や道路の見取り図が描かれていて、ヘビ玉の設置場所が記されていた。
聡史くんの家から道路を隔てて左横を辿ると、一塊の住宅地に当たり6軒の家並みが在る、その中の1軒が里美ちゃんの家だ。その周辺に10カ所以上もの、巨大ヘビ玉の設置場所が記されていた。
二人は見取り図を観ながら、念入りな打ち合わせをした。
二手に分かれて次々とヘビ玉に火を点けて行く算段だが、何故か、見取り図には、優作の家も、通りを隔てて直ぐ前に在るヒロの家も、ヘビ玉の設置場所から除外されていた。
目標の中心は あくまで聡史くんや里美ちゃんの集落で、優作とヒロの家が少し離れすぎているという理由も在ったが、優作はコンナことに家族を巻き込んで、自分の両親やヒロの両親から非難を浴びるのが、嫌な気と恐さが在ったからだった。
ヒロの不公平だから、自分たちの家も対象にしようよ という言葉を、年上の権威で押さえた。
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