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夜明け前、聰史くんの家の周りから、次々と煙の渦が巻き上がった。
「それは想像していた以上の、荒れ狂う煙の渦だったよ!」
と、おじさんは空しい表情で私に言った。
煙の中、優作が、ヒロが、必死に叫びながら家々の戸を雨戸を、ドンドンと叩いた。
「大変だ! 火事だ!火事だ!! 起きて、起きてくださーい! 」
ドンドン! バンバン!ドンドン!
「火事だ! 火事だよ! 逃げて! 逃げてくださーい! 」
二人とも迫真の演技だった!
地域の叔父さんや小母さんや子供たちが、寝間着やパジャマ姿で、寝ぼけ眼で、次々と家々から出て来た。
外に出ると辺り一帯は、白い煙の海だった。
流石の大人たちも驚き戸惑った。
中には、直ぐに家に引き返し、大事な物を取に行った、小母さんもいた。
「あっ、里美ちゃん、お母さん! こっち、こっちだよ、こっちが安全だよ」
優作は手招きした
「大丈夫です! 落ち着いて下さい! こっちがこっちが安全です!こっちに逃げて下さい!」
ヒロは冷静に誘導していた。
優作とヒロは荒れ狂う煙の中、手際よく、地域の人たちを誘導して、聰史くんの家の前に集合させた。
全てが手筈道理に巧く行った!
後は栄光のウソが浮かぶ!
賞賛のクライマックスだ!
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