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「パパー!」
その時、小さな女の子が突然乱入してきて、遼一さんの背中に飛びついた。
大騒ぎするその子を、遼一さんは優しく抱き止めて何かを諭すように話した。
僕は礼を言い、そそくさと家を後にした。
陽子さんは大きく目を見開いて固まったまま、僕に憑いて出て来た。
「よかったんですか?」
玄関を出て暫く行った所で、僕は陽子さんに尋ねた。
「う、うん」
陽子さんは我に返ると小さく頷いた。
そして、始めはクックッと、その内にアハハハと、声を出して笑った。
「そりゃあ出来るか、子ども」
意外にも、その顔は晴れやかだった。
「もう、あそこに私の居場所はないな〜」
陽子さんは呟いた。
「これからどうするの?」
僕の問い掛けに、
「また引越すよ」
そう言うと陽子さんは微笑んで、青く晴れ渡った春の空を見上げた。
おしまい
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