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どうして、こうなったの?
「ねえ、映理」
「んあ?」
「私、一日だけの契約って聞いたはずなんだけど」
「だっはは! うちも似たような手口やったで?」
「私は三日って聞きましたが」
「ま、エイプリルフールやったんが運の尽きちゃう?」
「くう」
どうして、こうなったの?
何で私は、何回も魔法少女に変身してるの?
「ま、ええやん。アンタも言われたんやろ?『君の苦しさや悲しさは、僕にはわからない。君の痛みに手を差し伸べることはできても、分かり合えない。だけど……僕らにしか見えない世界に、どれだけの悲しみや痛みが蔓延っているのか、手を伸ばすことができるのか、それを仲間達と見てからでも遅くはないと思う』……くっさ! サブイボ出るわ!」
そう言って自分の体をかいている映里と、横でにこにこと笑うこころさんの顔はどこかしら嬉しそうだ。
●
あれから、私は死ぬのをやめた。
私は何もわかっていなかった。
何も見えていなかった。
つらい環境で、懸命に生きている人がいる。
それでも幸せに手を伸ばして頑張ってる。
悲しすぎて声を出すことさえ諦める人もいた。
苦しみに絶望して死のうとした人達がいた。
《狩者》を追う中で知ったことだ。
それに、結局。
私に向けられた態度や言葉は、私の先入観がもたらしたものでしかなかった。
お父さんやお母さんの表情も言葉も、私の思いが生んだ勘違いだったってことは、あの晩に私がいなくなったことにお父さんに本気で怒られ、お母さんに泣かれたあとに話し合って分かった。
将来に向けても、少しずつ話を聞いてくれるようになった。茉奈やクラスメイト達を家に呼ぶことも多くなった。
私の未来だけど、もちろん私が決めれないこともまだまだ多い。
けれど。
まず、変わるのは自分からだ。
「ほな、うちらもそろそろ変身せな、な」
「終わったら寺家さんのおうちで甘味を御馳走になりましょう」
映里とこころさんが、ロッドで変身した。
映里は紫、こころさんはワインレッドのドレスだ。可愛いなぁ。なんで私は真っ黒なんだよぅ。
「私は寺家先輩が涙目になるまでツネリマス」
「だっはは!」
「あら、いいかも」
三人で大笑いしたあと、せーの、で夜に跳んだ。
私たちはこうして、毎日を生きている。
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