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じめじめとした雨期が終わり乾期に入ったばかりだというのに、早速熱い日差しが肌を焼いてヒリヒリと痛い。
フィオレオは元々色白であるが、魔法使いが常用する黒地に緑の紋様が入ったケープを羽織っているため、普段焼けることない肌は紫外線に弱かった。さすがにこの刺すような暑さのせいで、すぐに肌が真っ赤になるかと思いきや、今のフィオレオは色白な顔を更に真っ白にさせてワナワナと震えており、只でさえひょろくて弱々しい印象が強くなる。
都心部に近い栄えた街の魔法協会。大きな街ということもあり、地方よりも広く、重厚な雰囲気の協会の入り口付近にある魔方陣は、魔力を消耗した者達が回復するためのものだ。
相も変わらずフィオレオもこの魔方陣の常連…といいたいところだが、今回、フィオレオはまだここの魔方陣の世話にはなっていない。なぜなら、先程この街にパーティーを共にする勇者ガットと着いたばかりだった(ただし、昨晩搾り取られた分は前の街の魔法協会で回復済みである)。ちなみに、ガットはフィオレオの少し後ろで首をゴキゴキ鳴らしながらのんびりと欠伸をしている。
では、なぜ、フィオレオがそれほど青っ白くなってしまっているかと言うと、その手にある手紙のせいであった。
手紙は、ヴァイスという協会からのものだ。勇者を中心とした国の平和を守るパーティー達を統べる機関である。そこから定期的に指令や連絡のための手紙が、各地にある魔法協会を経由して勇者達に渡されるのだ。
今回も全国に散らばるパーティー達に向けて、『重要』という厳重な赤文字と共に届けられた。
『最近、魔物達が凶暴になってきているため、パーティー全体のレベルや質を上げる必要がある。そのため、パーティーの人数を3名以上で構成することとする』
何の変哲もない連絡だが、フィオレオにはとてもショッキングな内容だった。
『パーティーの人数を3名以上で構成』。
つまり、現在のフィオレオとガット2名構成のパーティーではいけないということであって、最低でもあと1名、メンバーとしてパーティーに入れなければならない。
人が増えればその分、パーティー自体のレベルが上がって指令の質も量も増えてお金も入りやすくなり悪いことはないように思えるが、勇者ガットーー淫乱で男好き、セックス好きな彼にガチ恋をしているフィオレオにとってそれはとてもリスキーなものであった。
雪のように真っ白で金の刺繍が施された上質な紙をぐしゃっとしながら既に涙が滲む碧い瞳でちらりとガットを見た。
彫りの深い顔立ちに、引き締まった筋肉質でしなやかな細身の体。褐色の肌は光に当たるとキラリと光って艶があり、より一層ガットの魅力が増す。ただ立って欠伸をしているだけのガットを見て、フィオレオは改めてその美しさと凛々しさに目を奪われ、息を飲んだ。が、それと同時に、こんな魅力的な男と共にして心奪われない人間がいるのかと不安に駆られる。
要領が悪いためレベルが低く、長身だけどひょろひょろした自分なんかでは、新しいメンバーが入ってガットに恋をされたら太刀打ちできないのではと頭を抱えた。
フィオレオの頭の中ではガットとまだ見ぬもう1人のパーティーが結ばれる想像までしてしまい、今にも卒倒しそうな面持ちで「ガット…、どうしましょう…」と消え入りそうな声で呟いた。
フィオレオの胸中、というか妄想まではもちろんガットは露知らず、フィオレオの手にしていた紙を奪って内容を読むとつまらなさそうに欠伸をしてから「ん?…ふぅん、まぁ、仕方ないな」とあっさりと言った。その言葉を聞いた直後、バターンと大きな音を立ててフィオレオが倒れたのだった。
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