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物腰が 柔らかくて スーツをキリッと 着こなす常連客の綾瀬さんは いつも同じ時刻に来て いつも同じブラックコーヒーをテイクアウトしてくれる。 「そうだ、これを」 「え?」 「先週末に出張先で買ったんです。以前、甘いものが好きだとおっしゃっていたので」 「私に?」 「はい、よければどうぞ」 「いつもありがとうございますっ」 綾瀬さんは 出張に行くたびに いつも私へと色々な お土産をこうして買ってきてくれる。 「わぁ、抹茶だ!」 「お口に合うと良いのですが。」 「私、抹茶好きなんです。っていうか、甘いもの全般に好きなんですけどね」 「だと思いました」 私の言葉にクスッと 小さく笑みをこぼす綾瀬さん。 ブラックコーヒーが 出来上がるまでのほんの数分間。 その短く 限られた時間に 綾瀬さんと交わす会話は いつも私の胸の奥をほっこりとあたたかくしてくれる。 .
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