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「さっき会った人は俺の双子の兄で、俺と違って優秀な兄でした。いつも俺は、優秀な兄と比べられ、周りから俺は駄目な弟だと言われていました。」
「……」
「両親と話していると仕事柄でしょうか、粗探しというか、疑いの目でなんだか見られているような気がして……自分の隠している全てを見透かされているような気がして、いつからか俺は自分を偽るようになっていました」
「……だから、そういう話し方なんですか?」
そう聞けば
綾瀬さんは一瞬
驚きの表情を浮かべたものの
次の瞬間には穏やかな表情へとなっていて
「気づいていましたか?」
「前に綾瀬さんが寝ぼけて話してる時、話し方が違ったし、それにたまに話し方が違う時があるので……」
確証は
なかったけれど
綾瀬さんと話をしていると
どことなく壁があるような気がして
ここまではいいけど
これ以上入ってはいけない
そんなボーダーラインが
なんだか綾瀬さんにはあるような感じがしていた。
だから
家族のことや
彼の子供の頃の話し。
年下で
なおかつ恋人の私に
いつまでも
敬語で話さなくてもいいですよって
会話を今までしてこなかったのもそれが要因だった。
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