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「俺はどんな時でも、自分を演じてきました。むしろ、演じてないと不安……と言った方が正しいかもしれませんね。」
「……」
「家族の前でも友達の前でも、変わらずにある一定の距離感を取りながら関わっていました。でも成美とは、その距離ですらもどかしくて、もっと触れたい欲が俺を支配して……気づかないうちに、素の自分で成美と接していることが多かったと思います」
綾瀬さんの
心の傷は思った以上に深くて
私なんかが
簡単に踏み入れていいような
そんな問題ではないのかもしれない。
それでも
せめて私の前だけでも
無理して自分を演じずに
偽りない綾瀬さんでいてほしいって思う。
だから……
「私は綾瀬さんが好きです、大好きです。どんな綾瀬さんでも私は受け止めます」
「……」
「なので、私の前では頑張らないでいいですよ。」
自分が今できる
精いっぱいの笑顔でそういえば
綾瀬さんは
何も言わずに下を俯いたかと思えば
次の瞬間には私は彼の腕の中に抱きしめられていた。
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