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「え?」
思わず声を上げる。葛葉が気付いて「ああ、手当てしといたよ」とさらっと告げた。
なんと両乳首に、肘などに貼る四角い絆創膏が貼られていたのだ。
「あまりに赤く腫れ上がっていたからね。薬を塗って、服で擦れないように。一応ね」
「っ、…」
たしかに手当てなのだが、卑猥さを感じるのは自分だけだろうかと葛葉を見るが、いつも通りの笑みで真意が探れなかった。
瑪且が訝しげに葛葉を見ていると、不意に葛葉が「あ、そうだ。まおに聞きたいことがあったんだよね」と思い出したように言って、眉尻を下げて瑪且の顔を覗き込んできた。
「まおはもう…僕のこと嫌いになってしまった?」
「ブッッ」
思わず吹き出す。葛葉が年齢にはそぐわないが、顔面にはそぐう上目遣いで見てくる。
「まお?」
「いや、あのですね…それは…」
もちろん、瑪且も覚えている。怒りに任せて言ってしまった恥ずかしい言動だ。葛葉が本気で心配しているのではなく、からかっているのも分かっていて、いっそ「そうですよ」と言ったらどうなるのかなと脳裏を掠めた。しかし、そんなことを言ったあかつきには、更なる羞恥に襲われることが分かりきっていて、「…嫌いじゃないですよ」と懸命な回答を返す。
だが、その回答では満足しなかったようで、葛葉が更に「それはどういうこと?」と尋ねてきた。
「どういうって…そのままの意味ですよ」
「んー?嫌いじゃないっていうのは、つまりどういう気持ちでいるってことなの?」
「…」
葛葉が何を言わせたいのか、すぐに瑪且は気づいた。幼い頃から葛葉は小さかった瑪且に「まおは僕のこと好き?」と聞いては「くーはしゃん、しゅき!」と言わせていたらしい。
たしかに中学生と幼児のやり取りであったなら可愛らしい内容だが、成人を過ぎた男同士がやるにはあまりに恥ずかしいやり取りだ。
「だから、嫌いじゃ…っ、ンアっっ」
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