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ぎゅうぎゅうまではいかないが、パーソナルスペースが確保できないくらいには混んでいる。まおは扉の前に立った。人がたくさんいる割にはあまり声は聞こえない。遠くから女子高生と思われる甲高い声が聞こえ、友人らしき人と楽しそうに談笑しているくらいだ。他は電車のリズミカルな音だけが響き、意外と静かなものだった。
普段電車に乗ることが少ないため、物珍しい風景を窓越しに見ると朝から寝ている人の多さに、通勤通学の大変さを思い知って、心の中で知らない人達へ「お疲れ様です」と呟く。
そんなことを考えていると再び扉が開いて、また新しい人々がなだれ込んでくる。さらに体が密着して隙間がなくなっていくと、ふわりと甘い匂いとすえた体臭が香ってきてまおは眉間に皺を寄せた。混ざった匂いがなんとも言えず、場所を変えようと視線を周りに向けるが人が密集していて動きが取れない。
降りる駅は決まっていないし、幸い各停電車なので次の駅はすぐだし、一旦降りて再び乗り直そうかなと思った時だった。
不意に、ひやり、とした空気が背後に漂う。
(っ、きた…っっ)
まおは、はっとしてその感覚に神経を尖らせた。すでに匂いは感じない。
そのまま冷えた空気はぴたりとまおの背中にくっつき、さらに前の方へ移動する。
(ビンゴだな。良かった、降りなくて。1発目から来るなんて、手間が省けて助かる)
条件反射で鳥肌を立てながらもまおは動かない。ただ、ごくりと生唾を飲んで、成り行きに任せている。
すると、その冷たい感触が徐々に人の腕と手の形へ変わっていった。ややゴツゴツした節の目立つ手で、腕には毛が黒々と生えており、すぐに男性のものであることが分かった。その両手が、スーツの上からまおの腹部を撫でる。忙しない動きでスーツに皺を作っていくとすぐにボタンを外して前をはだけ、今度はシャツの上からまおの腹を撫でた。
まおが「はいはい」と思いながら何食わぬ顔で電車に揺られているとスススッと両手が上がっていき、予想と違う動きに微かに眉尻を下げる。
(あー…そっちか。そっちはまだあんまり開発されてないんだよなぁ…)
ちょっと時間がかかるかもしれないと腕時計を見て、時間を確認する。悠長に見ていると腕はどんどん上がっていき、案の定まおの胸へと到達して無遠慮にそこを揉み始めた。
しかし、揉み始めてすぐに男の手が止まる。当たり前だ。
想定していた豊満な乳房の感覚ではないのだろう。
とは言え、男性にしては少しむちっとしたまおの胸の感触に満足したのか、再びぎゅっぎゅっと揉み始める。
しばらく単調な動きで揉まれ、まおはどうしようかと更に頭を悩ませた。
(まさか、これで終わり…?さすがにそこじゃあ一生感じないんだけど…)
たとえ、まおが他人よりちょっと敏感に開発されていたとしても、女性の乳房に当たる部分はまだまだ未開だ。
先端部分を触ってくれ!とどっちが変態なのか分からなくなるような願いを一心に念じ続けていると、念が伝わったのかいきなり乳首をぎゅっと指で掴まれた。
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