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「私、歌手になる」
娘の歌子16歳高校一年である。
「突然、何を言い出すの」
テーブルを挟んで娘の言葉に驚いた母親。
「やっとドナーが見つかって声が出せるようになったのよ。退院してまだ自宅療養中なのよ、分かってるの?」
「わかってる。でも、ママこの声聞いて」
軽く、口ずさんでみる。母親の目から涙がつーと流れた。
「この声本当にあなたの声なの?」
「ビックリでしょ。話してる時と、歌う声は全く違うのよ」
「本当にそうね。完治してからパパに話してみるわね」
オーディションに合格した歌子。華々しいデビューでステージに立って歌った。観客が皆涙する。
「なんて、心を打つんだ。泣けずにいられない」
鼻をすする音や、嗚咽が聞こえる。
泣ける歌声で瞬く間にスターになった。
ある日の夜夢の中に自分と同じ年ごろの女の子が出てきた。
「私、歌だけが自分を支える命だったわ。でも、同業者に妬まれたあの日、暗いステージが急に明るくなってスポットライトが当たったの。お客は騒然としたわ。可愛い女の子だと思っていたから・・・罵声を背中に浴びて劇場の屋上から飛び降りたの。あなたとっても可愛い」
その声にぞっとして目を覚ました。
「夢?夢だよね」呟いていると
「歌子、大丈夫何か変な音がしたけど」
母親がドアを開けて娘の顔を見た。
「あなた誰?」
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