探偵は遊戯がお好き

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「しかしここまでいい勝負になるとは。また俺のボロ勝ちかと思ったけど」 「ビギナーズラックだろ。お、三光だ」  めくり札から坊主が出て、早くも倉石は三光が揃った。 「おっと、どうする? 勝負するか?」 「馬鹿言え。こいこいだ」 「だよな♪」  現在倉石は八点差で負けている。三光は五点なのでここで勝負しても負けてしまうのだ。もっといい役を揃える必要がある。 「なぁ、ジン」 「ん~?」  山札をめくりながら倉石は柳川に話しかけた。 「さっきの話の続きだけどさ」 「おー」 「ジンと似てるなと思ったんだよ」  手札から紅葉を捨てる柳川の手がそこで止まった。 「どういうことだ? 俺が柳のカス札に似てるって」 「普段のお前はニートの引きこもりのゲーム廃人でどう考えても役立たずだ」 「おっといきなりのディスだ。こっから持ち上げてくれるんだよな?」  心臓を押さえるジェスチャーをしながら柳川が引きつった顔で笑う。 「柳のカス札もこいこいとか花合わせじゃ、そこまで強い札じゃない」 「まぁ確かにそうだな」  桜を場に捨てながら倉石がつぶやくと柳川も同意した。 「でもいざって時はすごく役に立つ。…桐だ」 「………」  山札から桐の札を出して場の桐と合わせた。そこで倉石は顔を上げて柳川の方を見た。 「この事件はお前がいなきゃ霧島の勝ちだった。お前はいざって時の鬼札になってくれた。ありがとう」 「…そんな改まって言われると変な気分だな」  多少たじろいだのか、柳川は少し赤くなって顔をそらした。 「お前でも照れるんだな」 「うるっせーな。そんなに持ち上げていいのか? 調子に乗るぞ?」  柳川の照れ隠しに倉石は意地悪く笑った。 「普段のお前はカス札で、そんなに強くねーよ」 「カス札なめんなよ! 十枚集まりゃ点数になるんだからな!」 「十枚集めて一点にしかならねーだろーが! どこがつえーんだよ⁉」  柳川の反論に倉石は混ぜっ返した。 (全く…素直に感謝を受け取れよ)  だがどこまでもマイペースでいつも通りな柳川に倉石もどこかほっとしているのも事実だった。
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