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さっきの『笑み』が嘘のような、呑気そうな顔をしている。
「フェンダル。」
「…ん?」
ミーレスはフェンダルの先ほどの『笑み』について聞こうとした。
だが、目が合った瞬間に、それをやめていた。
「ううん、何でもない。」
「そうか。」
フェンダルが頭の後ろに手を組んでいた。
「しかし、驚いた。まさか、ユウキが殺されてたなんて。」
「………うん。」
知っていたのではないか。こうなる事を。
フェンダルの事だから、予見していても何ら可笑しくはない。
王宮の内情やオレオールの境遇から、こうなる事がわかっていて、あえて見逃した。
むしろ、そうなるように仕向けた可能性だって…。
そこまで考えて、ミーレスはフェンダルを見る。
揺れる事なく、ただ遠くをまっすぐに見つめる黄金。
その横顔は、何を考えているのかわからなかった。
フェンダルにとって、ユウキは邪魔な存在だった。
どうしてか魔王に深い憎悪を抱き、魔王を殺し、国を手に入れようとしているフェンダルにとって、ユウキの存在は、己の大義名分を潰しかけない要素だった。
だから宰相を利用したのだろう。
「ミーレス、嫌ならついて来なくても良い。
俺は俺のやり方で欲しいモノを手に入れる。
だが、嫌ならこれ以上、あんたを付き合わせるわけには…」
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