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フェンダルがあまり出さない声を出しながら悪態をつく。
馬車内でオレオールは腕を組み、我が物顔でフェンダルの隣に座っていた。
向かいに座るのはミーレスだ。
「いつの間にかついてきてたんだって。」
「いや、いつの間にって…そんな事があるのか…?あの召喚した勇者とやらの面倒はどうしたんだ?」
「ユウキの事なら、従者に世話を頼んであるから心配するな。」
オレオールは偉そうに言った。
「オレオール、王国の外での任務だから今回は流石に危険だよ。
今からでも王国に戻った方が良いんじゃないの?」
オレオールがいくら王族から関心の薄い第五王子と言えど、王子には違いない。
二年前の洞窟探索の時はオレオールが王族だと知らなかったから連れていったが、さすがに何度も危険な目には遭わせられない。
何より、ミーレスとフェンダルの首に関わってくる話だ。
「護衛さえいたら問題はない。そうであろう?」
オレオールのフットワークの軽さは悪い意味で王族一だと言えよう。
「おいおい、これは中々ハードな任務になりそうだな…。
ミーレス、今からでもオレオールを捨てようぜ。」
「聞こえているぞ、フェンダル。
…案ずるな、二年前のような醜態は晒さない。
今の僕は、王宮聖術師にも劣らない腕があるからな。」
酷く自信満々に言い切るオレオール。
その直後、一行が乗った馬車の前に魔物が現れた。
悲鳴をあげながら魔物から逃げ惑うオレオールを見るのは、思いの外すぐの事だった。
「わー!!こっち来るなああっ!!」
「あの馬鹿王子、やっぱ今からでも捨てていこうぜ。」
「うん、そうしよう。」
オレオールが注目を一人で集めるので、その隙に魔物の討伐を行うのは容易かった。
馬車はもう引き返せないと言われて、オレオールを捨てる作戦は断念したのだった。
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