左手と右手

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 待ち合わせしているファミレスにはまだ友達は来ていなかった。  俺を奥に座らせ、右側に尚が座る。机の下で指を絡めた。  2人で1つのメニュー表を眺めていると、対面に、おまたせ、と待ち合わせしていた友達2人が座る。  食べたいものを注文してドリンクバーに向かった。ここでは手を離すけれど、ドリンクを注いで席に着くとまた手を取り合う。  全員無事合格できたことを祝って乾杯をした。  食べ物も揃い、口いっぱいに頬張る。美味しいし楽しいし、頑張って勉強をして良かった。 「おめでとう」  食べ切って満腹になると、笑顔の友達に祝われた。 「ありがとう、全員志望校受かって良かったよな」 「いや、そうじゃなくて、忠志と尚のこと」  俺と尚は目を合わせて首を傾ける。 「付き合ってんだろ?」 「やっと付き合い始めたのかって感じだよな」  正面で笑い合う友達に目を丸くする。付き合い始めたのはもっと前だけど、何で気付かれた?  「やっぱり、忠志くんが可愛くなったから僕と付き合ってるって気付いたんじゃない?」  顎に手を添えて真剣な表情の尚に2人は、ないない、と手と首を振る。 「忠志のこと可愛いと思ったことねーから」 「視力検査した方がいいと思うよ?」 「そのセリフは尚にそっくりそのまま返すわ。お前ら、間の手を見せてみろ」  繋がったままの手を出せるわけもなく、握る力を緩めると尚に阻まれる。キツく握り直されて、尚に目を向けた。視線が合うと優しく目を細められる。 「やっぱり見せなくていいわ。砂吐きそう」  友達がウエッと舌を出す。 「僕は見せたい。忠志くんとのこと自慢してもいい?」 「見せるなよ、絶対に見せるなよ」 「フリ?」 「ちげーよ!」  4人で笑い合う。  繋がったままの尚の左手をキュッと握った。応えるように尚も力を込めた。
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