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いつもは動画を投稿しても、誰からも何の反応もなく、再生回数も万年ほんの数回まちがって偶発的に流し流されちゃったって感じだろうなの一桁台、良いも悪いもない毎度毎度ほんとうにゼロの評価だったのだが、ある日めずらしく、というより正確には、初めて奇蹟的に視聴者から反応があった。
内容といえば毎回、自分で作詞作曲して、自分で歌入れもギターも弾いて、機材でベースやドラムやキーボードの音もアレンジつけてミキシングもした自作の曲に、自分で描いた簡単な手書きのイラスト、おまけにキャラでもアニメーションでもなんでもない変化のまったくない微動だにしないただの静止画像って調子で味も素っ気もないし、テロップもくそもないただシンプルに演出もデザインもされてない歌詞の無機質な文字がたんたんと下方の横に順に流れてゆくのみ。
だいたい、中学校のクラスの仲がいい友達にも内緒で最近はじめたばかり、まだ教えてもないし教える気もない。当面ずっとこれからも。100%自己満足。仮に誰かにジコマンといわれようがどうでもいいし、ジコマンでいい。ジコマンがいい。
べつに褒められたいわけでも、他人の共感がほしいわけでもないし。承認欲求? くそくらえって感じ。反吐が出る。誰になんといわれようと、ごくごくたまにアンチみたいな通りすがりのネット民に軽く悪く書かれて全否定されようと、自分のやりたいことを自分のやりたいようにやるだけだ。純度100%の自己満足。
だからもとより誰も何も知るよしもないはず、と冷静に想定していたので、基本つねに低視聴回数でゼロ評価っていうのも完全に予測の範囲内だったものの、今回のことには正直びっくりした。いよいよクラスメートの誰かに見つかったか、バレたかなとおもった。
でも、ちがった。二重の意味で。
コメントの主は「プリン大好きっ子@略してプリッコ」というらしい。ヘンテコリンな、とも平凡なともとれる名前にプリンどアップそのまんまの超つまんないアイコン、自分があまりプリンを好きではないからちょっと気にくわないのだがとおもいつつ、文章の書き方や中身からして、ぜんぜん知らない知り合いではない人間っぽいし、長文だし感想は本物かなともおもった。再生回数は初の二桁、いいねの評価をつけているところからも、この「プリン大好きっ子@略してプリッコ」とやらはどうやって辿り着いたのか、人知れず制作した歌のリリック動画をそれなりには熱心にちゃんと何回かは視聴したっぽい。
さらに自分でも心のなかでひそかに驚いたのは、ひとりでも評価とかコメントとかをもらえて、けっこうじわじわうれしくなったってことに、だった。
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