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レジを出た後、ジイさんが商品を袋に詰めているサッカー台の横に並んで、卵のパックだけを、こっそりジイさんのエコバックの中に入れ、何食わぬ顔で先に店を出た。
「光一…光一や…」
こ…これはオレが海外で詐欺をしていたときに死んでしまった祖父の声だ。その後ポリに捕まったので、未だに墓参りにも行けないでいた。
オレは声の聞こえた方を振り向き、周りを見渡したが誰もいない。
店の中でジイさんがレジのオバンに向かってしきりに頭を下げているのが見えただけだった。
オバンを見ると、苦笑いをこちらに投げていた。
「今度、じいちゃんの墓参りに行ってやるか。」
そう独り言を言った時、どこかで12時を告げる鐘が鳴っていた。
奇跡の卵 完
※あとがきは次のページで
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