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「ご、ごめんなさい、軽い冗談よ……」
鴫野がそう言うと、拓弥は元の位置に戻った。そしてズボンに両手を入れて、カメラをにらみつけるように視線を送った。
「まさか図星とは思わなかったから……」
鴫野はそう言い、撮影を再開した。
「なんだ、そうなのか。そういうことは早く言えよ」
部屋に低くて野太い声が響いた。
鴫野は振り向くと「あんた誰よ?」と負けじと高いトーンの声を上げた。
拓弥がカメラから視線を外して入口のガラス戸のところに立っている若い男がいるのを見た。生地の縫い目の金属の鋲がつけられている黒い革ジャン、半分を紫色に染めている髪、そして頬骨が出て無骨な印象を与える日焼け顔の男だった。
(続く)
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