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拓弥が持っていたタバコの箱をズボンのポケットから取り出して一本をくわえようとしたところで、翔太がやってきた。
大学に入ってからも身長が伸びたとは言っていたが、一七〇センチに届かない程度の背丈にナチュラルなぼさぼさヘアー、水色で白いストライプの入ったオックスフォードシャツにベージュの綿パンという春の若者らしい格好の若者が拓弥のそばに立っていた。翔太だ。
その姿には見慣れていたが、翔太はいつもと違って、様子がおかしかった。いつもなら、元気に「拓弥君おはよう!」などと声を掛けてくるのに。この日は違っていた。目線を拓弥とは合わせようとせず、うつむき加減であった。
(続く)
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