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(一)
加島拓弥が自身の部屋のセミダブルベッドから降りると、隣に寝ていた矢代実奈美も目を覚ました。
拓弥は彼女のことを気に掛けたそぶりを微塵も見せずに無言で浴室に入り、シャワーの栓をひねった。
「また、彼と何かあったんでしょう」
シャワーの湯気と水滴に包まれながら浴室を出てきた拓弥に実奈美が声をかけた。
拓弥は無言で応えながら、床の上に落ちているビールの空き缶を蹴飛ばし、落ちているバスタオルのところまでくると、それを掴み上げて濡れた体を拭いた。
(続く)
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